1.21年度前半期は1年次生を対象とする言語力基本調査を2種実施し、学生の言語力の実際を把握した。 (1)読解力診断を目的とした内容把握中心のテスト8回分を2009年4月に実施し、研究開始年度から蓄積した過去のデータと比較考察した。結果は平均点に大きな変化はなかったが、下位レベルの人数に若干の減少が見られた。 (2)大学初年次生用基礎言語カテストを2009年6月に実施し、2007-2008年度のデータと比較考察した。テスト結果は、中間層がやや少なく上位と下位の2グループに分かれるという点で過年度と共通点があった。 2.21年度後半期は修正教育プログラムの実施と読書環境整備、及び研究総括を行った。 (1)1年次生を対象とするプログラムの実施。2009年10月に3週間のプログラムを実施した。「新聞を読む→考察及び調査→書く」という基本サイクルは2006-2008年度と同じであるが、「書く」領域について改善を加えた。従来はどのような記事に対しても一律に同じ字数制限で課題を作成することとしていたが、2009年度は字数制限に3パターンを設定し、学習者が対象記事の内容、情報量、興味関心の度合いを勘案して自ら字数を選択する方法を採った。結果として書くための情報量と記述量とのバランスが良くなり、レポートの完成度が若干ではあるが向上した。ここから、記事選択の自主性を生かすためのレポート作成条件の設定が重要であることが示唆された。 (2)担当する教養科目講義(科目名「文学」)を通じて課外の読書活動への意欲を育てた。授業で取り上げる作品だけを精読するのではなく、短編集をテキストにして自発的、発展的な読書に導いた。 (3)4年間の蓄積資料の整理、分析を行った。入学時の言語力に差のある学生集団のリテラシー向上のためには選択的で、自由度の高いプログラム、多読に基づく作文プログラムが有効であることが示唆された。
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