研究分担者 |
櫻井 晃洋 信州大学, 医学部, 准教授 (70262706)
涌井 敬子 信州大学, 医学部, 助教 (50324249)
玉井 眞理子 信州大学, 医学部, 准教授 (80283274)
古庄 知己 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (90276311)
和田 敬仁 信州大学, 医学部, 准教授 (70359727)
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研究概要 |
遺伝情報は生涯変化せず,将来を予測し,他の血縁者にも影響を与えうる情報であり,これを医療に応用する場合には新たな倫理的問題が生じる可能性がある.本研究では,信州大学遺伝子診療部でわが国の先駆けとして1000例以上の事例を対象として行ってきたチーム医療としての遺伝カウンセリングを詳細に分析し,倫理ガイドラインに記載すべき項目として次のような事柄があることを明らかにした:治療法・予防法のない疾患の発症前遺伝学的検査,選択的中絶が選択肢となりうる出生前診断,同意能力のない未成年者・知的障害者の遺伝学的検査,血縁者への遺伝情報の開示,生命保険・医療保険の問題題,当事者間で意思が異なる場合,紹介医との遺伝情報の共有,診療録の管理・保存,遺伝学的検査の費用の負担,研究的側面のある遺伝学的検査,遺伝学的検査の結果,判断が困難な情報が得られた場合等.これらの問題について,臨床遺伝専門医等の有識者の意見を聴取し,WHOのガイドライン2002「遺伝医学における倫理的諸問題の再検討」を叩き台に,わが国の文化的背景・社会状況として加筆すべき内容,および近年のゲノム研究・遺伝医学研究により,変更が余儀なくされていることを加え,倫理ガイドラインのあり方について検討した.遺伝医療における倫理問題の検討は,欧米からの情報の追随あるいは単にイメージとして語られることが多いのが現状であったが,本研究により行われた検討内容,および遺伝に関わる問題の疑似体験を可能とする教育コンテンツは,臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラーはじめ多くの遺伝医療担当者にとって有用であり,わが国の遺伝医療の質的向上に役立てられると考える.
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