研究概要 |
1.平成19年度においては,18年度に引き続き,「疫学研究に関する倫理指針」の改訂を検討する専門委員会委員として,自らの意見を検討する機会を得た。19年8月からは,「臨床研究に関する倫理指針」の改訂を検討する専門委員会委員として,臨床研究のあり方の検討にも携わっている。(1)私にとって最大の問題は,診療のために採取・摘出された組織,細胞などを医学研究に用いる際の同意の問題である。診療開始時に,その後発生する組織等の研究利用に対して同意を得ておくいわゆる「包括同意」に対しては,同意の対象が具体的に特定されていないことから効力を否定する見解がある。しかし,私見では,「包括同意」に加えて,進行中の研究に関して(個人情報や研究の独創性を保護しつつ)情報を公開するとともに,公開された情報に照らして自らの試料の研究利用を拒否したい(一旦同意した)患者の希望に応じる仕組みの構築を研究機関に求めることによって,患者の意向に対応するなかで研究利用の需要を満たすことができると考えられた。(2)また,未成年の対象者に関して,疫学研究指針で16歳以上の者について,倫理審査委員会の承認を条件として,本人の同意のみで研究を実施できる可能性が認められたことを踏まえて,同様に臨床研究指針の規定も改訂されるよう求めていきたい。 2.2008年1月に英国シェフィールド大学が中心となって進めているバイオバンクとプライバシーをめぐる共同研究に参加した。これまでいくつかのヒト試料バンクにおいて用いられているone way anonymizationの方法(試料等収集機関における匿名化と対応表の保管,研究機関へのコード化試料等の提供)が,プライバシー保護と追跡によるデータの追加の確保に有効な方法であると考えられたが,この点に関する欧米各国のあり方の検討を20年度において継続し取り纏めに入りたい。
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