研究概要 |
成体ラットの左坐骨神経を切断し,3-7目後に近位側断端および健常側の右坐骨神経幹からmRNAを抽出した。cDNAを合成した後,サブトラクション、ハイブリダイゼーション法を行い,cDNAクローン約150個を得た。これらの塩基配列を決定し,GenBank/EMBL/DDBJに登録されているデータと比較したところ,89%が既存の配列と一致もしくは高い相同性を示した。コードされるタンパクは,細胞外マトリックスおよび細胞膜表面分子,細胞骨格関連分子,リン酸化酵素等の代謝酵素,分泌タンパク,RNA合成関連分子,タンパク合成関連分子,細胞周期、DNA複製関連分子,その他に分類された。これらの中から,以下の分子種を選び実験を進めた。 (1)細胞骨格分子としてβ5-tubulinおよびその類似タンパクのcDNAを選択し,神経損傷時に発現レベルが変化することを見出している。また,実験の過程でβ5-tubulinに類似する細胞骨格分子をコードすることが推測されるcDNA2種を新たにクローン化した。 (2)分泌性タンパクの構造を備えているホルモン等のタンパクと細胞外マトリックスタンパクも、併せて検討した。ポリスチレンのプレートをVI型コラーゲンで被覆すると,神経成長因子で刺激したラッ褐色細胞種由来PC12細胞の突起伸展が誘導されるのに対し,非被覆時には誘導されない。(Yokoyama S, et. al.Soc.Neurosci.Abstr.872.21,2007) これらのcDNAにコードされるタンパクの中には,疼痛発生時の神経回路の可塑的変化に関与するものがある可能性が示唆された。膜電位依存性Na^<+>チャネルの発現増加あるいはK^<+>チャネルの発現低下をもたらす活性の有無については未確認である。
|