研究概要 |
我々は,ヒト椎間板組織におけるNG2プロテオグリカン(以下,NG2)の発現を調べ,その発現レベルは変性の進行と共に増強することが判明した(平成18年度)。そこで平成19年度は,末梢神経(ラット坐骨神経)でのNG2発現を検討した。さらに,椎間板に分布し,腰痛の原因となる侵害受容線維(C線維)の走行とNG2の発現を比較検討した。 【方法】12-16週齢,雄のLewisラットの坐骨神経の神経内膜をteased fiber化した。4%パラフォルムアルデヒドにて固定後,NG2の発現と以下のマーカーの発現を免疫組織学的に比較検討した。1.シュワン細胞(抗S100抗体),2.無髄シュワン細胞(抗Glial Fibriary Acidic Protein[GFAP],抗Growth Associated Protein 43[GAP43]抗体)3.無髄線維(抗Calcitonin Gene Related Peptide[CGPR],抗isolectin B4[IB4]抗体)。同一ラット足底表皮も同様に免疫組織学的検討を行った。 【結果】有髄神経線維束の間隙に,核を有する細長いNG2陽性細胞は束を形成し存在していた。2重蛍光免疫組織学的手法による検討により,NG2陽性細胞はSl00の発現は認めなかったが,GFAPおよびGAP43と同一分布を示した。また,CGRPおよびIB4陽性神経線維の走行はNG2の発現と同一分布を示した。また,ラット足底皮膚においては,CGRPおよびIB4陽性線維は表皮基底層下まで,NG2陽性細胞に取り囲まれていた。 【考察】神経内膜をteased fiber化することにより,有髄および無髄線維はそれぞれが分離されNG2発現細胞を詳細に観察することが可能となった。NG2は無髄シュワン細胞において発現され,C線維を取り囲むように存在していた。NG2の発現は,侵害受容線維(C線維)の発芽,再生に関与し,腰痛を含む疼痛に大きく関与する可能性を考えている。
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