研究課題
基盤研究(C)
原始性感覚である痛覚および重力感覚に注目し線虫C.elegansの侵害受容性逃避反射nociceptive ithdrawal reflexである渦巻き反射coiling reflexと重力走性Gravitropismとを指標として、これらの原始性感覚情報の統合機構のメカニズムについて、電気生理学的ならびに分子生物学的に解析を行った。侵害刺激から逃避する反応はすでに単細胞生物であるゾウリムシで観察することができるほどの生体にとって基本的な生存機構である。この逃避反応は環形動物・線形動物では渦巻き反となり、高等動物になると引っ込め反射に発展する。他方、地球型生命体にとって重力感覚は意言にほとんどのぼらないにもかかわらず生存に基本的な持続的刺激である。すなわち、地球上では1Gの淘汰圧刺激が常に生体に加わっている。本研究の目的は、C.elegansの渦巻き反射の行動学的特徴について解析した。具体的には、重力変化に伴う原始的な痛み受容行動である線虫C.elegansの渦巻き反射の閾値の変化を重力刺激に有無で比較し定量的に解析することに主眼を置いた。C.elegansにおいては機械的な反射閾値がヒトに比べてかなり低いこと、ヒトにおいて発痛物質であるブラジキニン、ヒスタミンには応答性が低いこと、低pH刺激や低浸透圧刺激に対しては顕著な渦巻き反射を引き起こすことが判明した。重力ストレスを加えると渦巻き反射の頻度、持続時間とも抑制された。以上より、C.elegansは侵害刺激を受容可能な生体として存在しているが、高等動物とは異なる末梢受容機構を備えていることが示唆された。
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