研究概要 |
神経因性疼痛とモルヒネ鎮痛耐性の発現機序は多くの点で類似性を有している。最近、ラットの脊髄クモ膜下腔内(i.t.)ヘモルヒネを連続投与した際、カスペース-3が関与する脊髄後角細胞のアポトーシス誘導とそれに付随しての鎮痛耐性が発現されることが報告されている。また、モルヒネ鎮痛耐性に関与する一酸化窒素は、カスペース-2や-3の上流に位置して機能している転写因子p53の活性化を介してアポトーシスを誘導する。これらのことから、p53がモルヒネ鎮痛耐性形成に関与している可能性が推察される。従って、平成20年度はモルヒネ鎮痛耐性形成におけるp53の関与について検討を行ったところ以下の結果が得られた。 1.モルヒネ0.1nmol i.t.投与による鎮痛作用は、鎮痛測定2日前に30mg/kg、前日に60mg/kgのモルヒネを1日2回皮下投与することにより完全に消失し、鎮痛耐性が形成された。 2.モルヒネ鎮痛耐性は、モルヒネ反復投与毎の5分前にp53阻害薬であるピフィスリン-αをi.t.投与することにより、一酸化窒素合成酵素の非選択的阻害薬であるL-NAMEやカスペースの非選択的阻害薬であるZ-VAD-fmkを処理した場合と同様に抑制された。 3.モルヒネ耐性マウスにおいて、脊髄p53の発現量は増加していた。 以上の結果から、モルヒネ鎮痛耐性の形成には脊髄のp53が関与していることを明らかにした。 なお、上記に示した結果はNeuroscience Letters〔450,365-368(2009)〕に掲載された。
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