研究概要 |
本年度は、慢性骨盤痛を生じた患者の集積を行った。主として,子宮内膜症の患者において、月経時の疼痛の程度(visual analog scaleによる相対的評価),疼痛の部位,子宮内膜症病変の位置(腹膜子宮内膜症およびダグラス窩子宮内膜症,卵巣子宮内膜症,子宮腺筋症),癒着と子宮内膜症病変の広がりの相対的評価(rASRMの子宮内膜症スコアおよび癒着スコアによる評価),NSAIDsなどの標準的治療による疼痛緩和の程度(visual analog scaleによる相対的評価)を109名の患者に対して情報収集を行った。 患者から同意を得た上で,卵巣病変,腹膜病変,子宮腺筋症病変,および子宮内膜からのmRNA抽出を行った.また,われわれの研究室で提案したステロイドホルモンのwithdrawalmodel(17β-estradiol+progesterone投与後の離脱によって子宮内膜症の進展に関わる因子を探索したmodel)におけるIshikawa細胞のmRNAを抽出した. NGF, TrkA, p75^<NTR>の定量的解析方法の確立を行った.NGFとTrkAのreal time PCR用のプライマーを設計し,定量的な解析方法を確立するした.また,子宮内膜症病巣において,NGFレセプターの発現解析を行ったが,major receptorであるTrkAはほとんど発現せず,代わってNGFとの結合がやや弱いp75^<NTR>が発現していることが確認された.このレセプターについても定量性のあるreal time PCRのシステムを構築した. NGFの発現が,正所性子宮内膜と比して,子宮内膜症性嚢胞,腹膜病変,および子宮腺筋症にて強いことを確認したNGFの発現強度は腹膜病変の顕著であり,その次に子宮内膜症陸嚢胞に発現増強が認められた.
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