研究概要 |
脊髄後角I,II層に集積するCD9の痛覚伝導路における役割を明らかにする目的で、本年度は下記の実験を行った。 1.CD9は脊髄後角でTRPV1受容体と同じ部位に染色される。しかし、シナプスの周囲にはアストロサイトの突起が密集することが多いため、まず、後角でのアストロサイトの分布を明らかにするために、アストロサイト特異的にgreen fluorescent protein(GFP)を発現するトランスジェニックマウス(生理学研究所池中一裕教授から供与)の脊髄でGFPの分布を検討した。結果、この部位ではアストロサイトの細かい突起が密集するためCD9が軸索末端にあるかどうかさらに検討が必要と考えられた。そこで、CD9とTRPV1受容体が同じ後根神経節細胞に発現しているかどうか摘出後根神経節を用いて免疫染色した。後根神経節ではCD9は衛星細胞に強発現するが、一部の神経細胞でも発現することが確認された。2重染色の結果、TRPV1受容体陽性細胞でCD9が発現していた。 2.初期の計画ではHEK293細胞などの株化細胞にCD9、TRPV1などの複数の遺伝子を発現させる予定であったが、発現量の割合が複合体形成に影響する可能性があるため、後根神経節細胞の分散培養系で検討するための準備を行った。分散培養系でもCD9およびTRPV1が同じ神経節細胞に発現していることを確認した。1)および2)の結果から、今後摘出あるいは培養後の後根神経節を用いてこれらの関係を調べることにした。 3.CD9は、膜タンパク質のみでなく、GqやPKCなどの細胞内シグナル分子とも細胞外シグナル依存的に結合することが知られている。脊髄後角のCD9の集積部位でGqおよび一部のPKCサブタイプの集積が見られたことから、これらとCD9やTRPV1の関係に関しても来年度中に明らかにする予定である。 これらの結果に関して、現在論文作成準備中である。
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