研究概要 |
4回膜貫通型タンパク質(テトラスパニン)であるCD9は、細胞外からのシグナル依存性にGタンパク質やPKCなど細胞内シグナル分子を集合させる作用を持つことが知られている。我々は、このCD9がマウス脊髄後角I、II層および三叉神経脊髄路核など痛覚に関連する領域に集積するのを見出した。本研究ではCD9の局在と他の痛覚関連分子との関係を明らかにする目的で実験を行い、以下の結果を得た。 まず、CD9と複合体を形成する他のテトラスパニンCD81およびCD151は後角への集積が見られないことから、このような分布はCD9に特徴的であることを明らかにした。このような特徴的な集積はラット脊髄では明らかではく、種による違いが考えられたが、ヒトの脊髄後角ではマウス同様に認められることから、ヒトの痛覚伝達にも関わっている可能性が考えられた(新潟大学脳研究所高橋均教授との共同研究)。次に、後角でのCD9の局在を明らかにするために、アストロサイト特異的にGFPを発現するマウスの脊髄および培養後根神経節(DRG)細胞を用いて解析した。その結果、CD9はTRPV1などの痛覚関連分子と同様にDRGニューロンに存在し、痛覚伝達に関わるシナプス前末端に存在すると考えられた。脊髄後角では、免疫組織学的にGqやPKCサブタイプと同じような集積像を得られたことから,後角でのこれらの分子を介したシグナル伝達との関連性が考えられた。しかし、免疫沈降法では分子間の直接的相互作用の明らかな証拠を得ることはできず、本研究期間終了後も引き続き検討していく予定である。さらに、CD9は胎生期からDRGニユーロンに発現し、個体差はあるもののCD9ノックアウトマウスのDRGは形態や細胞配列などに変化が見られることから、感覚神経路の形成の段階から関わっている可能性が示唆された。以上の結果に関して、現在学会発表および論文投稿準備中である。
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