研究概要 |
糖尿病性神経障害に対し血管新生療法が有効であることを,basic fibroblast growth factorを用いて証明した(Diabetes,55:1470-1477,2006).さらに有痛性糖尿病性神経障害に対する骨髄単核球移植による血管新生療法の有効性について,STZ糖尿病ラットを用いて検証した.骨髄単核球は,6週零の別のSDラットの大腿骨および脛骨より18ゲージ針注射器を用いて骨髄を採取した.得られた骨髄は,生理食塩水で希釈し,濃度勾配法により骨髄単核球を遠心分離し1%アルブミン含有生理食塩水に懸濁した後,STZ投与2週後の糖尿病ラットおよび正常ラットの片側後肢骨格筋に26Gの注射針を用いて移植した.痛覚過敏については,圧刺激毛(モノフィラメント)による足部刺激に対する後肢の逃避行動を指標とし,移植後の痛覚過敏行動の経日的変化について経時的に定量した.また骨髄単核球移殖2週間後に末梢神経伝導速度,神経内血流,形態学的評価も行い,糖尿病性神経障害について総合的に評価した.STZ投与により引き起こされた痛覚過敏は,非移殖側において計測した第33日目まで持続した.糖尿病ラットにおいて骨髄単核球の移植は,移植後3日後より移殖側における痛覚過敏を改善し,その効果は測定期間中持続した.生理学的検査では,糖尿病ラットの移殖側において,非移殖側に比較し有意な末梢神経伝導速度および坐骨神経内血流の増加を認めた.さらに糖尿病ラットの移殖側において筋束あたりの血管数の増加を認めた.骨髄単核球はサイトカイン分泌に優れ,サイトカインカクテルとしての効果も期待できるとされる.一連の結果において骨髄単核球移植3日後より痛覚過敏が改善した事実は,骨髄単核球が分泌するサイトカインが痛覚過敏に有効である可能性が高い.さらに骨髄単核球による血管新生が血流改善,神経伝導速度の改善,痛覚過敏改善の持続をもたらしたと考えられる.
|