研究概要 |
これまでに我々は、STZ糖尿病ラットを用いた糖尿病性有痛性神経障害モデルに対し、正常ラットより分離した骨髄単核球移植が有効であることを明らかにした。しかしながら、実際の治療においては、糖尿病患者より分離した自己骨髄単核球の移植が必要となる。そこで、糖尿病ラットより分離した骨髄単核球について検討した。6週零のSDラットにSTZを腹腔内投与し糖尿病を誘導し、8週間後の大腿骨および脛骨より骨髄を採取した。同様に正常ラットより骨髄を採取した。得られた骨髄は,生理食塩水で希釈し,濃度勾配法により骨髄単核球を遠心分離し1%アルブミン含有生理食塩水に懸濁した後,プラスティックディッシュ上に播種し、colony forming unitを計測した。さらに得られた骨髄単核球よりRNAを分離し、サイトカインの発現について検討した。その結果、糖尿病ラットより得られた骨髄単核球においては、basic FGF, VEGFの発現が低下しており、血管新生作用が減弱している可能性が示唆された。さらに糖尿病ラットおよび正常ラットより分離した骨髄単核球をそれぞれSTZ投与8週後の糖尿病ラットの片側後肢骨格筋に26Gの注射針を用いて移植し、骨髄単核球移殖4週間後に末梢神経伝導速度,神経内血流,形態学的評価も行い,糖尿病性神経障害について総合的に評価した.正常ラットの骨髄単核球移植では、糖尿病ラットの移殖側において,非移殖側に比較し有意な末梢神経伝導速度および坐骨神経内血流の増加を認めた.一方、糖尿病ラットの骨髄より分離した骨髄単核球移植においては、その改善効果は減弱していた。糖尿病ラットの骨髄単核球では、神経障害改善の効果が正常ラットの骨髄単核球と比較し低下しており、実際の治療においては、いかに糖尿病状態の骨髄単核球の機能を改善させるかが重要な問題となると考えられた。
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