研究課題
基盤研究(C)
これまでに我々が開発した2種の運動器障害性慢性痛モデル動物(筋侵害性モデル、ギプス固定モデル)を用いた。両モデルともに障害部の脊髄分節を越えた痛み行動の拡がりを示し、痛み行動の慢性期では障害部位からの入力をブロック(坐骨神経ブロック)しても他部位の痛み行動は減弱を示さず、痛み行動が中枢性に起こっている可能性が示唆された。中枢の関与として脊髄グリア細胞の活性を解析した。痛み行動の急性期と慢性期に異なる活性を示し、痛みの拡がりを示す部位においても活性が認められた。今後は様々な時相の標本を用い、痛み行動の拡がりと各脊髄分節におけるグリア細胞の活性をさらに詳細に解析し、シグナル物質の染色等とあわせて、痛み行動の拡がりの機序を探る。分子生物学的解析の予備実験として、脊髄および筋におけるBDNFとIL-6のmRNA発現を調べている。体内留置式血圧プローベを用いた自律系の解析では、ギプス固定中に交感神経活動が亢進し、痛み行動が始まるギプス除去後に低下し始め、慢性期にはその低下した状態が続いた。自律系の変調を伴うCRPS患者では、病態初期に交感神経活動が亢進し、慢性期には低下しているケースが多く、本モデルはその病態と類似している。冷環境刺激に対する反応結果から、固定中では交感神経系の賦活化が大きく、慢性期では血管におけるアドレナリン受容体の感受性が亢進している可能性が示唆された。今後は自律神経系作動薬および拮抗薬を用い、さらなる解析をすすめる。痛みを抑制する方法として、ミノサイクリン投与、またトレッドミルを用いた運動を行なった。いずれも痛み行動を抑制する傾向の結果が得られたが、個体差がみられため、投与法や運動方法を再検討する必要があった。筋侵害性モデルにおいて、若齢処置では慢性的な痛み行動が発症せず、神経系・免疫系の発達に関する因子が発症に関与していることが明らかになった。
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