研究課題
基盤研究(C)
脊髄における神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の活性化による一酸化窒素(NO)産生の増加が神経因性疼痛の維持に重要であること、nNOSの活性化にはNMDA受容体NR2Bザブユニットのチロシン1472残基でのリン酸化が重要であることを明らかにしてきた。本研究では、脊髄での神経可塑性を誘導するNMDA受容体-NO経路の機能的、可逆的変化について、ノックアウトマウスや各種プロスタグランジン(PG)、オピオイド、グルタミン酸アナログを用いて現在検討した。nNOS活性という生化学的な変化をNADPHジアホラーゼ活性(NADPH-d)を用いた酵素組織化学により組織学的に可視化、定量化して、それらのNO産生を神経因性疼痛の客観的指標にすることを成功した。さらに、インタクトな摘出脊髄標本とNADPH-d組織化学を用いて脊髄後角におけるnNOS活性の評価モデル標本(ex vivo標本)を作製することに成功した。ノシセプチン(N/OFQ)は、nNOSを活性化することによって神経障害痛みのメンテナンスに関与している。N/OFQは脊髄後角表層でnNOS活動を増大した。そのnNOS活性化の効果は、NMDA受容体阻害薬のAP-5やMK-801でブロックできたが、NR2B受容体の選択的阻害薬のCP101,606ではブロックできなかった。N/OFQのnNOS活性化効果は、NR2A受容体欠損マウスでは観察されず、NR2D受容体欠損マウスでは増強効果が観察された。N/OFQがNR2Aを含むNMDA受容体の活性化によって始められるカスケードによりnNOS活性化を刺激したことを示唆した。さらに、NO自身が逆行性メッセンジャーとしてシナプス前終末に働きnNOS活性にフィードバックをかけていることを明らかにした。
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