Transient receptor potential A1(TRPAI)は一次知覚ニューロンの小型細胞に発現し、Allylisothiocyanate(AITC)やCinnamaldehydeによって活性化するチャネルタンパクとして知られ、痛み受容の新しい分子として注目されている。一方、炎症、腫瘍など組織損傷のとき放出されるプロテアーゼがProtease-activated receptor 2(PAR-2)を介して痛みを引き起こす新しい所見が報告された。我々は2004年にPAR-2によるTRPV1の活性増強をJ Neurosci.誌にて報告したが、本研究ではTRPV1と同じファミリーに属すTRPA1とPAR-2の機能的interactionを検討した。パッチクランプ法を用いてHEK293細胞やラット後根神経節(DRG)細胞のAITC活性化電流を測定した。TRPA1を発現させたHEK293細胞では、PAR-2選択的なagonistであるSLIGRL-NH2はAITC活性化電流及びCinnamaldehyde活性化電流を増大させた。この増大は、phospholipase C(PLC)の選択的inhibitorで抑制できたことから、PLCの活性化はTRPA1の機能調節において重要な役割を果たすことが推測された。また、DRGニューロンにおいても同様の所見が観察された。代謝型受容体であるPAR-2とTRPA1がPLCを介して疼痛発生システムを形成することは、炎症性疼痛発生の新しいメカニズムである。
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