H18年からスタートした本研究ではTRPV1と同じファミリーに属すTRPA1とPAR-2の機能的interactionを検討した。免疫組織化学法を用いてTRPA1とPAR-2のラット後根神経節(DRG)細胞における共存を確認した後、パッチクランプ法を用いてHEK293細胞やDRGニューロンにおけるAITC活性化電流を測定した。TRPA1を発現させたHEK293細胞では、PAR-2選択的なagonistであるSLIGRL-NH2はAITC活性化電流及びCinnamaldehyde活性化電流を増大させた。このような現象は疼痛行動学的実験においても観察された。この増大効果は、phospholipaseC(PLC)の選択的inhibitorで抑制できたが、PKC inhibitorは抑制できませんでした。細胞内PIP2の投与はこの増大を抑制した。これらの結果はPLCの活性化によりPIP2が加水分解され、TRPA1に対する抑制を解くことが考えられた。また、DRGニューロンにおいても同様の所見が観察された。以上の結果から、皮膚組織の炎症や、出血、膵臓炎などPAR-2を活性化する因子が放出される場合は、TRPA1を介した痛み発症の新しいメカニズムが示唆された。これらの結果は今まで報告されず、われわれの一連の研究から炎症性疼痛の新しいメカニズムが明らかとなりつつある。またTRP/PAR-2シグナルは鎮痛治療の新しいターゲットとして期待される。
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