研究課題
基盤研究(C)
日本人の本態性高血圧患者では、およそ4割が食塩摂取により血圧が上昇する食塩感受性であるといわれている。このような食塩感受性に関与する要因として、食生活・加齢・性差などがあげられる。本研究では、タンザニア在住25〜35歳め健常な成人男性を対象に3週間(無処置→食塩負荷→利尿剤服用;各1週間)にわたる食塩感受性試験を行った。アフリカ人は高血圧になりやすい、食塩感受性が高い遺伝背景をもつといわれており、本研究はより食塩感受性高血圧の関連遺伝子探索に適した条件で検討をおこなった。食塩感受性試験では血圧測定、24時間尿採取および採血をおこない、尿および血中のナトリウム、カリウム、クレアチニンを測定した。また血中のアンギオテンシン変換酵素(ACE)活性を測定した。候補遺伝子としては、αアドユーシン遺伝子(ADD1)、アンギオテンシノーゲン遺伝子(AGT)、アンギオテンシン受容体遺伝子(ATR1)、アンギオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)、アルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)などを選出し、その一塩基多型により遺伝型を決定し、形質との関連解析をおこなった。本研究対象は健常人であるため、ADD1,AGT、ATR1などの遺伝子型と食塩摂取による血圧との関係はみられなかったが、ACE遺伝子I/D多型とCYP11B2遺伝子C-344T多型の遺伝型の組み合わせにより、尿量等が変化することが確認された。CYP11B2とACEの遺伝型の組み合わせが尿中ナトリウム排泄量と関与し、それが健常人において確認されたことは、本研究が初めて報告する。また、利尿剤服用による血圧の低下が大きいCYP11B2とACEの遺伝型の組み合せが観察され、食塩感受性候補遺伝子としてACEとCYP11B2が有用である可能性が示唆された。食塩感受性のような環境に対する反応性は、単独の遺伝子では影響は小さいが、いくつかの遺伝子間の相互作用により、その影響が病態として大きくあらわれる可能性が示唆された。
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Therapeutic Research 27(9)
ページ: 10-12
Therapeutic Research. 27(9)