研究概要 |
不揮発性ロジックに基づくクイックオン・超並列・動的再構成可能VLSIの基盤技術を確立するため,本年度はまず,MRAMのメモリセルに用いられている不揮発性記憶デバイスのTMR素子を活用して,記憶機能と演算機能を一体化する不揮発性ロジック回路の構成方法について検討した.TMR素子では絶縁膜を挟んで上下に磁石があり,その磁化方向が平行の場合は低い抵抗値に,逆に反平行の場合は高い抵抗値となる.しかし,この抵抗値の変化量は,MOSトランジスタのオン・オフと比べ極めて小さいため,TMR素子とMOSトランジスタを混載させた提案回路では,センスアンプなどでも用いられている差動形回路に基づいた回路構成について検討した.さらに動作時の貫通電流を無くすため,ダイナミック回路機能も差動形回路に併用した.その結果,記憶入力付き演算回路を構成した場合,同等機能のCMOS回路実現と比較し,同程度のスイッチング速度を維持しながら,動的消費電力と静的消費電力を大幅に低減できることをしました.特に,静的消費電力は電源電圧をカットオフすることで完全にゼロにできるため,次世代VLSI技術として極めて有用である.また,他の不揮発性生記憶デバイスとして,強誘電体キャパシタを用いた応用回路についても検討した.具体的には,記憶と演算機能を一体化する典型例としてCAMチップの設計と試作を行い,その原理動作を確認した.以上の研究成果として,TMRロジック関連では,2006年5月に情報処理学会東北支部奨励賞を,強誘電体ロジック関連では,2007年1月開催のVLSI設計技術に関する国際会議ASP-DACにて「Special Feature Award」をそれぞれ受賞するに至った.
|