研究概要 |
現在のストレス社会では,日常生活や作業中においてヒトにかかる負荷を評価し,それに応じて外部環境を改善する必要性が増加している.これまでに提案されているリアルタイム副交感神経活動推定手法は呼吸情報と心拍変動を取得・解析するものであるが、外乱に弱いために安静座位でしか使用することがきでなかった.そこで平成18年度は実作業環境下で想定される誤差要因に対して頑健なリアルタイム副交感神経活動推定手法の考案と検討を行った. 実作業環境において誤差要因と考えられるのは、体動による呼吸センサの誤差とリアルタイムでの心拍変動の補間によって生じる誤差である。はじめに、安静座位と実際の作業環境下(キーボードタイピングとタッチパネルを用いた暗算課題)でサーミスタと呼吸ピックアップベルトによる呼吸データを計測し、基準である流量計のデータと比較することで体動による呼吸センサへの影響を評価した。その結果、安静時には呼吸ピックアップベルトの精度が高いが、作業時にはサーミスタの精度の方が高くなることがわかった。次に、心拍変動の補間方法としてこれまで用いられてきたDCSI(Derivative of the Cubic Spline Interpolation)法は端点条件があるためリアルタイムでの解析に用いることはできないので、リアルタイムで解析が可能なIHR(Instantaneous Heart Rate)法と、Berger法で精度を比較した。その結果、IHR法よりもBerger法のほうがDCSI法で得られた副交感神経活動の推定値に対する相関係数が高く、補間による誤差が少ないことがわかった。 これらの結果から、補間法としてはBerger法を用い、さらに安静時には呼吸ピックアップベルトを、体動がみられる作業時にはサーミスタのデータを用いることで、実際の作業環境下でも体動の影響が少ない手法が構築できることがわかった。
|