研究概要 |
本研究では,光波伝播現象を基礎としつつ,従来の方法とは異なる新しい発想に基づいた高速性・高セキュリティ性を有する暗号化アルゴリズムを開発するとともに,それを計算機コード化し,新しい画像情報の暗号化/復号化法および電子透かし埋込み/抽出法を開発することを目的とする.その基礎は光波のフレネル回折現象に基づくが,この現象を新しい数学変換概念である非整数次フーリエ変換(fractional Fourier transform)で表わす立場に立ち,その普遍性,高拡張性を利用して,より高セキュリティ・高速処理可能な画像情報の暗号化/復号化アルゴリズムを提案し,実用化を目指す. 平成19年度は,非整数次フーリエ変換のコード化にあたり,結果の精度がフーリエ変換次数によって大きく異なることがわかったため,まずはそれらの影響について調べた.その際,既存の公開されているコードと独自に開発したコードを取り上げて,それらの結果の違いについても調べた.その結果,次のことが分かった. 1.二つのコードとも,変換次数が0〜0.5または1.5〜2の範囲では正しい結果を与えない. 2.この変換次数の範囲では,非整数次フーリエ変換の次数の加法性を利用して,2段階の変換を行うと効果がある 3.公開されているMatlabコードの結果は,一部間違いがあり,結果を正しく与えない. この他に,フレネル変換領域の二重ランダム位相コーディング法の光学系の実現と本提案手法の適用の前段階として,フーリエ変換領域のコーディング法に基づく光学系を設計・実現し,ランダム位相板として使用する液晶パネル(液晶プロジェクター用の市販品)の位相変調特性を調べた.その結果,以下のことが分った. 1.現状の商用液晶パネルでは最大位相変調量が0.7π程度しかない 2.最大位相変調量の不足は独立なランダム位相の要素数(変調の際の画素数)を拡大することでカバーできる.
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