研究概要 |
安全で使いやすい車椅子として知的車椅子/ロボット車椅子といわれるものの研究が盛んになっている。しかし,これまでの研究では,使用者や周囲の人の物理的な負担を減らすことしか考えられていなかった。車椅子としては,このような物理的な負担の低減に加え,使用者と周囲の人の心理的障壁を減らし,身体の不自由な人が積極的に外出したくなるようにすることも重要である。本課題では,この心理的障壁の低減の試みとして,利用者の物理的負担の少ない形で,他人から自立的に行動しているように見える車椅子の実現を目指して研究を進めている。 昨年度は介護者の位置をレンジセンサのデータから求め,介護者に追随して動く車椅子を開発した。しかし,単に人に付いて動くのでは,自立して外出しているようには見えない。そこで,今年度は,美術館などで車椅子使用者が友達と作品を一緒に語り合いながら見て回るという状況を考え,車椅子使用者が細かい操作をすることなく,このような状況にあった動きのできる車椅子を検討した。車椅子に2台のカメラを取り付け,1台の画像からは介護者の顔の方向,もう1台の画像からは作品の位置を検出するようにした。介護者が作品の近くで足を止めると,介護者の顔の向きを求め,その方向に作品があるかを判断する。作品があると,介護者への追随はやめて,作品が見やすい位置へ移動する。また,介護者が顔を車椅子使用者の方に向けて話しかけると,車椅子が介護者の方へ回転する。このような動作が自動的に行われることにより,車椅子使用者は車椅子の操作をすることなしに,外部からは車椅子を適切に動かして作品鑑賞を楽しんでいるように見えると期待される。まだ,車椅子の動きが遅く,実際にこのように見てもらえるかは検証していない。今後は,車椅子をさらに改良して評価実験を行っていく予定である。
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