研究概要 |
家庭と新生児の絆を促すケアとして提唱されているディベロプメンタルケアの実現を目指して、病院の新生児集中治療室(NICU)の環境が新生児にストレスを与えているかを調査し、予後の感性発達に影響を与えているかを調査することが本研究の目的である。このための具体的な研究課題は以下4項目を実施した。(1)実際の病院におけるNICUの環境の現状を調査する。(2)刺激を受けた場合の新生児の身体反応や刺激がない場合のデータを数多く収集する。(3)刺激が無い場合の身体反応との対比を行い、NICU環境が新生児に影響を与えているか否かを調査する。(4)刺激時の身体反応からストレス評価指標を作成する。 長野県こども病院のNICUの環境調査では、下記の結果が得られた。成熟児のいる部屋で日中140lux,夜間20luxであった。未熟児のいる部屋は昼夜とも90luxと対象患者によって部屋の照度が異なった。NICU内,保育器内で起こる騒音は以下の通りであった(1)看護婦と医師間の業務会話(64.4dB)、早産児の啼泣と人工呼吸器作動音(81.0dB)、早産児の啼泣とアラーム作動音(77.3dB)、保育器の窓を閉める(76.0dB)、保育器の窓を強く閉める(121.5dB)、保育器の上にペンを置く(65.1dB)、保育器をたたく(91dB)。この他の刺激については、治療における痛み、手による接触などがあった。これらの刺激が呈示された際の、心電図、末梢血流、動作を測定し、心電図の記録から心拍数(HR)、心電図R波の間隔(RR間隔)の変動係数(CVRR)、自律神経活動割合(交感神経活動・副交感神経活動)を解析した。早産児8名を対象に、修正32〜39週まで1週間毎にNICUの光環境を変化させた前後において心電図測定と行動観察を行い、HR、RR間隔、CVRR、自律神経活動割合(交感神経活動・副交感神経活動)、state、ストレス行動(自律神経系・運動系・状態系)を解析した。生理・行動の両指標において、どの週数でも早産児が光環境の変化に対し影響を受けていることを確認した。
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