研究概要 |
本研究は,ゴム膜を風船のように膨らませるとき,風船の内側から糸で引っ張ることで,ある種の形状を出力する形状デザイン装置の開発を目的とする.目的の装置は,バーチャルリアリティで造られる形を,シミュレーションすることで実際の形状としてラピッドプロトタイピングする造型機器で,出力された形状は触覚に訴えることの出来ることを目標とする. 初年度は,直径90cm全長120cmの管の上部に12.5cmの円盤状ゴム膜を貼り付け,下部から圧縮空気を吹き込むことで,ゴム膜を膨らませる装置の製作と試験および問題点の検討を行った.ゴム膜には,弾性率と扱いやすさからラテックスシートが適当であり,造型用の糸は木綿にラテックス溶液でシートに固定するのが適切であった。ゴム膜を膨らませる他の圧縮空気は,計画した範囲より微弱な圧力差であったので手動で設定した.また造型用の糸はゴム膜が縮むときに巻き取らなければならないことが判った.そこで糸ごとにモータを用いたリールで巻き取る機構に変更し,モータの正逆停止を制御することにした.糸の長さはリールの回転を反射型フォトインタラプタで読み取ることにした.糸はゴム膜に25mm間隔の3角格子に配置した.糸を制御するモジュールは装置の管内に配列をなして設置する構造にし,回路・配線も装置内部に配置した.装置の制御系の開発は次年度に行うこととする. 造型形状のシミュレーションは,膨張時のゴム膜厚さの変化が変形率に影響する問題が顕著になり,純静的な有限要素法では解析できなかった.CGのモデラとの連携を含めて検討中である.作成した装置の試験は,(1)糸を全て自由にした形状,(2)中央1本を2cmに固定した形状,(3)中央5本を2cmに固定した形状を生成し,その形状を「周波数変調位相シフト法」で測定した.(1)と(2)は半球とヘソのあるアンパン形状を生成したが,(3)に関しては先に変形した部分の厚みが減少し伸び率が大きくなる問題点が起こった.
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