研究概要 |
本研究では,まず,セルラーオートマトンを用いて数値実験用の交通流モデルを構築した.次に,平均走行時間の最小化を目的とした経路選択を行うために,大域的最適化手法と局所的最適化手法を実装した.大域的最適化手法では,全ての車両における経路選択を中央管理者が行う.中央管理者は,遺伝的アルゴリズムを用いて,交通流モデル内を走行する全ての車両の平均走行時間を最小化する.一方,局所最適化手法では,個々の車両が各経路の走行時間を予測し,予測走行時間の短い経路を選択する.走行時間の予測は,過去の経験に基づき,ニューラルネットワークを用いて行われる.さらに,数値実験により,大域的最適化手法と局所的最適化手法の比較を行った.走行車両が少ない場合では,遺伝的アルゴリズムにより,大域的最適解が得られた.一方,局所的最適化手法では,個々の車両が利己的に走行時間の最小化を行うため,全走行車両に対する平均走行時間の大域的な最小化は行われなかった.しかし,大域的最適化手法では,走行車両数が増えると経路選択の組合せ総数が指数関数的に増大するため,大域的最適解を求めることが困難になるだけではなく,遺伝的アルゴリズムにより良好な実行可能解を獲得することも難しくなった.これに対して,局所的最適化手法では,走行車両が増えた場合でも,効率的に良好な経路選択が得られた。このような数値実験結果は,大都市の交通渋滞回避など大規模な交通システムにおける局所的最適化手法の有効性を示唆するものである.
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