研究課題
最近の脳機能の研究法の著しい進展は、実際以上に脳画像の信頼性や妥当性を過信する傾向を生んでいる。これら神経科学の手法の効用と限界に関する正確な情報提供は神経科学者の任務であり、脳機能、脳構造に関する評価情報の取り扱いに関わる倫理が問題となる。これは、神経科学関連分野でも単に研究者個人のレベルで対応可能な研究倫理にとどまらない、社会的な問題に直面する可能性が高いためである。本研究はこのような可能性を見据えて、ニューロエシックス(神経科学倫理)の構築が狙いである。そのために、様々な脳機能研究手技に専門的な理解と経験を有する実践家による、それぞれの研究法の今後の進展具合の学習や限界の検討を目指す取り組みを実施した。本年度は、(1)それぞれが依存している脳機能研究法についての効用と限界に関する資料の収集を行った。(2)平成18年7月に東京で開催された脳科学倫理に関するワークショップに2名の研究分担者が参加し、資料収集を行った。(3)平成18年9月に日本神経心理学会において「脳を測る・計る・量る」と題するシンポジウムを開催し、fMRI(functionalmagnetic resonance imaging)、PET(positron emission tomography)、ERP(Event related potentials)、NIRS(near infrared spectroscopy)、MEG(magneto-encephalography)などの脳機能評価法の最近の進展と効用と限界を4名の講演者を招いて議論した。(4)最新のfMRI研究の進捗を学ぶためにLondon大学の研究者の講演を行った。(5)ニューロエシックスに関する日本人の倫理性の特徴を検討する目的の国際比較を19年度実施すべく,その打ち合わせのために国立台南大学社会科学院を訪問しワークショップの計画等について協議した。
すべて 2007
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神経心理学 23
ページ: 2-7