研究概要 |
本研究では,dual Penalized Logistic Regression Machine(dPLRM)などの帰納的学習機械により,人間の空間音源定位のしくみの解明を試み,帰納的学習機械を用いた統計科学的手法による新しいアプローチの有効性を示し、空間音源定位のための工学的に有効なアルゴリズムを提供することを目的とする。本年度は同期性検出器が必要ない機構について検討を行った。その結果、神経回路網の機能の一つとして知られるleaky integratorを聴覚モデルに導入すれば、同期性回路を必要としない神経発火パターンの入力表現が可能であるという推測を得た。Leaky integratorは異なる複数の時定数で少しずつリークする積分器で、同期現象を扱える神経系のモデルとして視覚モデルなどにはすでに導入されている。今回、leaky integratorを聴覚モデルに導入することを新たに考えた。 また本年度は、大規模なデータで上記のleaky integratorによる神経発火パターンの入力表現の有効性を確かめるために、dPLRMのための逐次学習アルゴリズムを開発・実装した。学習サンプル数が多い場合には計算コスト、必要なメモリが大きくなり、特に(リアルタイム処理が要求される)テスト時に問題となる。本検討では、機械学習のBoostingなどで用いられるGreedy Search(GS)アルゴリズムを利用して、性能を下げずにパラメータ行列を小さくした。GSアルゴリズムでは逐次的な学習を行うが、各繰り返しにおいて正解方向の尤度を最大とするサンプルだけを選択して用いる。その結果、パラメータ行列は正解方向数×選択サンプル数(<<学習サンプル数)となった。 逐次学習アルゴリズムを実装したdPLRMによる水平面定位の予備実験において、leaky integratorによる神経発火パターンの入力表現の効果を確認した。
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