本研究では、dual Penalized Logisitic Regression Machine (dPLRM)などの帰納的学習機械により、人間の空間音源定位のしくみの解明を試み、帰納的学習機械を用いた統計科学的手法による新しいアプローチの有効性を示し、空間音源定位のための工学的に有効なアルゴリズムを提供することを目的とする。 本年度は、昨年度に研究開発した、収束が速い学習アルゴリズムで実装されたdPLRMを用いて、パルス波、純音、白色雑音、3分の1オクターブ雑音の4種類の音源に対する水平面定位、垂直面定位の実験を行った。実験で使用した聴覚モデルには、同期性回路を必要としない神経発火パターンの入力表現を可能とするleaky integratorを導入した。その結果、到来方向±10度を正解とした場合に、どの音源に対しても、水平面については9割以上の精度で、垂直面に対しては7割以上の精度で定位できることがわかった。更に、学習範囲外の方向に対しても、聴覚で行われるように、ある程度は外挿して頑健に定位できることがわかった。以上より、dPLRMを用いた本手法は、工学的に有望であるとともに、人間の空間音源定位のしくみの一候補となりうると考える。
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