本年度は、質量会析で検出される個々のペプチドイオン強度の理論値導出方法を確立し、その理論値と実験値のパターンマッチングを工夫することで、質量分析におけるタンパク質発現量を推定する方法を開発することを目標に以下のとおり研究を実施した。 1)量子化学計算:ジペプチドのC-N結合エネルギー計算 2つのアミノ酸が結合したジペプチドのC-N結合エネルギーを量子化学計算で求めることを目標に、量子化学計算レベルの検討を行った。現在のところ、構造最適化およびエネルギー計算にMP2/6-31G**を用いて計算を行っている。なお、この計算には、広島大学量子生命科学プロジェクト研究センターが所有しているPCクラスターを使用した。 2)トレーニングデータおよび評価用データの取得 計算機を用いた1)の計算と平行して、質量分析器を使用してトレーニングデータおよび評価用のデータ取得のための実験を行った。実験には、広島大学量子生命科学プロジェクト研究センターが既に所有しているSHIMADZU社製の質量分析器を用いた。 3)帰納学習の検討 1)で求めた値を核として、イオン強度に対する基礎的な理論付けを試みた。その際、個別の差異を吸収するのに帰納学習を用いた。ただし、帰納学習部分で用いる属性値は、まだ検討中であり、最終的な答えは出ていない。 上述の検討を踏まえ、最終年度となる来年度は、現時点ではまだ計算が完了していない1)のジペプチド全400パターンの量子化学計算をまず終わらせ、引き続き計算化学と機械学習を組み合わせることで理論的に発現量推定を行うシステムの構築についてさらに検討を進めたい.
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