群れ行動は昆虫、魚類から人に至るまで多くの動物に観察され、共通した神経機構の存在が予想される。本年度は「School fish」で知られる小型魚類(メダカ・ゼブラフィッシュ)を材料にして、群れ行動を誘導・維持する実験系を確立した。自然条件下で魚は水流の中で視覚情報を一定に保つことで定位置を保っており(定位行動)、小型魚類は群れを形成して定位している。定位行動は研究室内で簡単に誘導することができる。固定した円形水槽の外側で縦縞が描かれた円筒ドラムを回転させると、魚は背景を追従し、水流がない状態でも周囲の縦縞に定位する。これまでに定位行動を2匹ペアーで誘導すると1匹はドラムの縦縞(背景)を追従するが、もう1匹は縦縞を追従する個体を追尾する傾向があること(追尾行動)を見出している。2個体間の追尾行動は群れ行動に必要な個体間相互作用を反映していると考えられる。本年度はこの行動をCCDカメラと動画解析ソフトを用いて魚の相対的な位置関係を算出し、追尾行動の定量化に成功した。追尾行動を示す場合は、2個体の距離は数センチの間で再現性良く安定し、一方の個体がもう一方の個体を向いている時間の割合は全体の8割以上達した。 次に生育環境が追尾行動に与える影響を解析する目的で、ふ化してから2週間単独飼育又は集団飼育した幼魚を用いて追尾行動を比較した。その結果、集団飼育の場合は成魚と同様に追尾行動するが、単独飼育の場合は幼魚同士が反発して追尾行動ができないことが確認された。一方で集団飼育および単独飼育の幼魚の定位行動は正常であった。よって小型魚類が群れ行動をするためには他個体と相互作用する生育環境が必要である可能性がある。 また追尾行動に依存に神経活動する脳領域を同定する目的で初期応答遺伝子(c-fos)の全長cDNA配列を同定した。
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