霊長類で用いられている方法に倣い、無痛的に頭部を固定した覚醒下のマウスより、神経活動を記録するシステムを立ち上げたので、引き続き疾患モデルマウスからの記録を行った。 大脳基底核疾患のモデルとして、DYT1ジストニアモデルマウスを取り上げた。ヒトの遺伝性ジストニアの原因遺伝子である異常DYT1遺伝子の産物を過剰に発現するように変異を加えると、運動亢進などの運動異常を示す。これは、米国マウントサイナイ医科大学のShashidharan博士が作成したもので、同博士との共同研究を行った。その結果、淡蒼球、脚内核、黒質網様部などにおいて発射頻度が低下すると同時にバースト発射をしていること、また大脳皮質刺激により、これらの核に長い抑制が観察できることがわかった。さらに、この長い抑制は線条体刺激でも観察されることがわかった。 以上の結果から、DYT1トランスジェニックマウスでは、何らかの要因で大脳皮質-線条体-淡蒼球内節投射(直接路)の活動性が異常に亢進したため、この経路の投射先である視床や大脳皮質を抑制できなくなり、不随意運動が起こっていると考えられた。
|