研究概要 |
ゲノムの非翻訳領域から産出される、神経新生を引き起こす新規の機能性RNA、small modulatory dsRNA(smRNA)の分子制御機構について解析を行ってきた。記憶・学習機能を司る成体脳内の海馬領域の、神経幹細胞から神経新生が起きる最初の段階のニューロブラストに、このsmRNAの前駆体となる長鎖2本鎖RNAが発現されることが判明した。成熟smRNAはNRSEと呼ばれる約20-23残基ほどの配列をもった2本鎖の小さい機能性RNAの形状を持ち、脳内神経幹細胞から新しく神経が新生される一時期に、細胞の核内に現れる。バイオインフォマティクス解析から、NRSE配列は神経特異的遺伝子群のプロモーター領域に含まれ、その配列はXenopus, mouse, rat, chicken, sheep, humanの種間で保存されており、9つのジンクフィンガーモチーフをもつNRSF/RESTとよばれる転写因子タンパク質が配列特異的に結合する。前駆体NRSE smRNAを発現するプロモーターとして機能するレトロトランスポゾンのユニットを、Genomic DNAからクローニングし、そのプロモーターユニットにEGFPレポーターを連結させたコンストラクトを作成した。このコンストラクトからレンチウイルスを作成、ゲノムに定常的に発現レポーターカセットを導入するため濃縮したHIVウイルスを用いてin vivoの評価を行った。濃縮したHIVウイルスを、Stereotaxicインジェクションにより、成体ラットの脳内神経新生領域にマイクロインジェクションした。3週間後、脳を抽出し脳切片を作成し、分化経路ごとに特異的なマーカーを用い免疫組織染色およびin situ解析を行ったところ、プロモーター活性が脳内の海馬神経前駆細胞特異的に認められた。この成果を論文にまとめ、現在投稿中である。
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