アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus: AAV)はヒト第19番染色体のAAVS1領域(19q13.4)に特異的に組み込まれるが、この性質を利用し効率よく表現型が安定したトランスジェユックマウスを作製する方法を確立するため、基礎的検討に着手した。AAVの複製蛋白質RepはAAVゲノム両末端のinverted terminal repeat(ITR)と呼ばれる配列に結合するが、同様の配列がAAVSl領域に存在し、Rep蛋白質がITRとAAVSl領域の両者に結合しAAVゲノムのAAVS1への特異的組込みが起こる。モデル実験として、マウス10T1/2細胞のAAVS1 orthologにNeo遺伝子を組み込ませるため、Neo遺伝子をAAVゲノムのinverted terminal repeat(ITR)で挟んだプラスミドと、AAVの複製蛋白質であるRep68を発現するプラスミドを構築した。Rep蛋白質は必要以上に発現させると細胞毒性が強く出るため、比較的弱いSV40プロモーターもしくはマウス乳腺腫瘍ウイルス(mouse mammary tumor virus: MMTV)のプロモーターを用いた。NeoプラスミドとRep発現プラスミドを10T1/2細胞にコトランスフェクションし、Neo遺伝子が組み込まれているか、Neo遺伝子とAAVS1領域に設定したプライマーでPCRを行い、その増幅産物量をコントロールと比較した。その結果、有意のAAVS1特異的組込みは起こっていなかった。今後、他のNIH3T3などのマウス細胞株を用いて同様の実験を行うと共に、Rep68発現用プロモーターをCMVプロモーターなどの強いものに変え同様の解析を行う予定である。
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