研究概要 |
本研究ではヒトの実験モデル動物としての高い資質を有するカニクイザルを用いた移植研究やワクチン開発を進展させるため、カニクイザル主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原をコードする遺伝子群における多型解析、DNAタイピング法の開発ならびに集団遺伝学的解析を実行することを目的とする。以下に本年度における成果を記す。 (1)Mafa-DPB1遺伝子において187個体(ベトナム産/中国産:99個体、フィリピン産:44個体・インドネシア産:44個体)の多型解析をおこなった結果、40種類のアリルを同定した。これらには、それぞれの集団特異的に同定された対立遺伝子、種を越えて保存されている対立遺伝子が含まれていた。また、マカク属サルの対立遺伝子の多くはヒトとの種分化前に生成されたものが維持されているのに対して、ヒトの対立遺伝子はマカク属サルとの種分化後に一部の対立遺伝子から生成されたことを明確にした。一方、Mafa-DQB1,Mafa-DRAの2遺伝子については64個体の多型解析をおこなった結果、それぞれ33,24種類の対立遺伝子がそれぞれ同定されており、現在Mafa-DPB1遺伝子と同様の解析を進めている。 (2)Mafa-DQB1,Mafa-DRA,Mafa-B近傍に位置する3個のマイクロサテライトマーカーを用いて、ベトナム/中国産:140個体の多型解析おこなった結果、13,19,7種類のアリルをそれぞれ同定した。これらの多型の組み合わせ(ハプロタイプ)を推定した結果、136種類のハプロタイプが推定されたことから、カニクイザルのMHC領域は極めて多様性に富んでいると考えられた。
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