本研究ではヒトの実験モデル動物としての高い資質を有するカニクイザルを用いた移植研究やワクチン開発を進展させるため、カニクイザル主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原をコードする遺伝子群における多型解析、DNAタイピング法の開発ならびに集団遺伝学的解析を実行することを目的とした。その結果、カニクイザルのMHC領域には、約60個の極めて類似性の高いMHCクラスI遺伝子が位置するが、本年度では、HLA-A、HLA-B、HLA-DRBの直系遺伝子であるカニクイザルMHC-A、MHC-BならびにMHC-DRB(Mafa-A、Mafa-BならびにMafa-DRB)遺伝子を、末梢血由来のmRNAから特異的にPCR増幅させる技術を確立した。その後、Mafa-Aにおいて89個体(ベトナム産:32個体、フィリピン産:28個体、インドネシア産:29個体)の多型解析を進めた結果、1個体あたり1〜4種類の塩基配列、合計121種類の塩基配列が同定されたこと、前年度に報告したMafa-DPB1に観察された3集団に共通な塩基配列は認められなかったことから、Mafa-A多型は3集団が分岐した後に生成されたと示唆された。今後、HLA-Aとの類似性を詳細に比較するとともに、ペプチド結合領域などの遺伝子構造の特徴付けにより、インフルエンザペプチドワクチンの開発に役立てる予定である
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