| 研究概要 |
細胞の力学情報伝達は細胞・組織の生理・病理に深く関わることからそのメカニズムを知ることは非常に重要であるが,力学刺激が実際に細胞内でどのように伝達されているか,またそれによって細胞の機能がどのように修飾を受けるのかに関しては未知の部分が多い.本研究では,マイクロマシニング技術により細胞底面に発生する力を直接計測できる実験系を構築し,これを用いて力学刺激が細胞骨格を伝達する経路およびその大きさを定量的に求めることを目的とする.具体的にはマイクロマシニング技術を用いて細胞を培養するマトリックスにマイクロポストを形成し,このマトリックス上で細胞の形態を制御しながら細胞を培養する技術を開発する.マイクロポストの寸法や形成する領域を工夫することで細胞の形態を制御することができる.本年度においては,マトリックスデバイスの作製,マトリックス上での細胞培養実験を主として行いその技術を確立した.試料として平滑筋細胞を用いた.まず,マイクロポストの作製として,フォトリソグラフィー技術によりシリコン基板にパターンを形成した.その後,PDMSを流し込み加温硬化させ,マイクロポストを有する細胞培養用マトリックスを作製した.ポストの高さは10μm,直径3μm,ポスト間ピッチは8μmであった.続いて,マイクロポスト上で細胞培養実験を行った.細胞をマイクロポスト上に播種すると,細胞の牽引力によるマイクロポストのたわみが観察された.マイクロポストのたわみから焦点接着斑に発生する力を画像処理により推定した.同時に行ったアクチンフィラメント構造の観察から,アクチンフィラメントの分布と牽引力の大きさ,方向には有意な相関があることが示唆された.次年度は,マイクロポストの直径やピッチ間距離,マイクロポストの作製面積などマトリックスデザインを工夫することで細胞の接着面,接着状態を制御し牽引力実験を行う予定である.
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