研究概要 |
本課題では糖鎖ヒアルロン酸を抗原に化学修飾することで肝類洞内皮細胞特異的送達を達成し、抗原特異的免疫寛容の誘導の可能性について検討した。昨年度までに蛍光標識したヒアルロン酸のマウス個体における組織分布、細胞選択性の検討、およびモデル抗原としてオブアルブミンのヒアルロン酸修飾を行い、これらの結果を踏まえ本年度ではヒアルロン酸修飾オブアルブミンの組織分布、肝類洞内皮細胞取り込み活性、そして寛容誘導能について検討を行った。単離した肝非実質細胞各分を用いたin vitroの解析では分子量9,000以上の長鎖ヒアルロン酸、あるいは分子量3,000以下の短鎖ヒアルロン酸においても重量分率が40%を越える修飾体において良好な肝類洞内皮細胞取り込み活性が認められた。この結果は、ヒアルロン酸をデリバリーリガンドとして応用する上での重要な知見となった。また修飾オブアルブミン静脈投与後の組織分布の検討では、ヒアルロン酸修飾により肝臓への集積性が3倍向上することが明らかとなった。さらに静脈投与後の肝非実質画分を解析した結果、ヒアルロン酸修飾により類洞内皮細胞への取り込みが促進させられるだけでなく、肝常在性マクロファージであるクッパー細胞による非特異的取り込みを有為に押さえられることが明らかとなった。つづいて抗原特異的免疫寛容誘導能をBalb/cマウスを使用して検討した。ヒアルロン酸修飾オブアルブミン前投与後にアジュバントとともに未修飾アルブミンを腹腔内に投与し血清中のオブアルブミン特異IgE抗体の産生を定量した結果、対象の未修飾及びPEG修飾オブアルブミンに比べて有為にIgE抗体の産生が抑制されていた。この結果によりヒアルロン酸による抗原修飾により、抗原特異的な免疫寛容が誘導できることが示唆された。
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