研究概要 |
本研究が開発を目的とするステントは、生体に一番負荷が少ない無害なマグネシウムを素材として作製することにより、冠動脈や大動脈閉塞部を拡張後、患部が治癒する2〜3ヶ月後には血管内で自己融解消滅し、再血栓閉塞を防止する独創的なものである。現在のステンレススチール製またはチタン・ニッケル合金製ステントは、血管内に恒久的に残存し突発的な再血栓閉塞を起こしやすく、そのため抗血小板薬を一生涯服用しなければならずまたその副作用も大きな問題となっている。 純マグネシウム材の適用を考えた場合、純マグネシウム材の伸びは6%程度であり、この程度の変形能ではステント材として使用することは不可能である。そのため延性のある合金の開発が進められている。一方、本研究は純マグネシウム単結晶素材の製造にOCCプロセスを用いるが、現在までにOCC純マグネシウム材は、マクロ的には単結晶となるがミクロ的には筋状一方向整列組織になる。そして、この材料は従来法による単結晶材より高強度で200%以上の延性を示すことが明らかとなっている。これは十分ステント材として利用できるものと考えられる。そこで本研究ではOCCプロセスにより,高純度マグネシウムを連続鋳造することで単結晶の線材を作製し,その特性を評価することを目的とした。 評価を行った結果、1.OCCプロセスにより作製した線材の約70%が単結晶であること。2.結晶方位により機械的性質、特に伸びに大きな差がみられること。3.(0001)面に対し約50度の角度を有する単結晶は、すべり及び双晶変形により200%以上の伸びが得られること。4,多結晶と比較し生理食塩水中での腐食速度が遅くなることが明らかとなった。
|