平成18年度は、麻酔下健常ウサギを用いた実験から、反応性充血後の一酸化窒素産生による内皮依存性のflow-mediated vasodilatation(FMD)を観察した。大腿動脈近位部を圧迫し、血流を5分間完全遮断-再疎通した後、診断用超音波で大腿動脈径を経時的に測定したが、FMD測定はこの実験系で十分可能であった。このため、本研究の目的である低周波超音波(20KH)を大腿動脈に照射し、血管拡張が認められるかを検討したが、反応性充血後と同様な血管拡張は得られなかった。 また、このFMD測定精度の問題点として、ウサギの大腿動脈はヒトに比べ極めて細いため、再現性にばらつきがあることも明らかになった。 平成19年度の実験では、これらの問題点を改善するため、より大型動物のイヌを用いて、同様に大腿動脈のFMDを測定することにした。低周波超音波の音圧を段階的に上昇させ、その間の大腿動脈径を、新たに開発された血管トラッキング技術を用いた自動解析システムで測定した。結果として、4頭中1頭では明らかな血管拡張が認められたが、他では十分な血管拡張が認められなかった。 FMD測定の再現性は大型動物と新しいシステムの使用で改善されたが、血管拡張効果は十分とは言えなかった。超音波照射の直接効果以外に、間接的な温熱効果も影響している可能性があり、更に効果的な血管拡張を得られるようにするためには、この血管拡張の規定因子を明らかにする必要があり、今後の検討課題と考えられる。
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