研究概要 |
口蓋形態が構音獲得に及ぼす影響を解明する目的で,口蓋裂形成術術後患者の4歳時(歯科矯正治療が開始される前)での上顎模型を用いて形態分析を行い形態の違いと異常構音発現との関連性について検討した. 1)模型計測 模型計測は,以下の手順で行った. (1)三次元形状計測器(サーフレーサー)を用い三次元形態をスキャンする. (2)スキャン画像をパーソナルコンピューターに取り込み三次元形態解析ソフトで三次元画像に再構築する. (3)構築した三次元模型画像上に計測基準点を設定し,基準平面を決定する. (4)模型画像上に計測点を定め,距離や面積体積などを測定する. 2)口蓋形態の変化に伴う構音状態の分析 得られた模型を片側性唇顎口蓋裂(UCLP),口蓋裂単独(CP)の裂型別に正常構音症例,異常構音発現症例に分類し,各々に現れた形態的特徴について検討した.なお,異常構音は口蓋化構音以外の発現が少なかったため,今回は口蓋化構音発現症例のみを対象とした.正常構音群(N群)と口蓋化構音群(P群)の形態を三次元的に比較したところ,以下の結果が得られた. (1)UCLPでは,N群はP群に比べて口蓋後方部の表面積が有意に狭く,矢状断面において口蓋前方部の膨隆が有意に小さかった. (2)CP群では,N群はP群に比べ口蓋前方部が有意に狭窄し,前方部の幅径および歯列弓長が有意に短かった. (3)P群において,UCLP群はCP群より後方部の横断面における断面積が有意に小さかった. (4)N群においてもUCLP群はCP群より後方部の横断面における断面積が有意に小さく,口蓋前方部の幅径は短く狭窄していた. (5)口蓋化構音の発現には,口蓋前方部の平坦化および狭窄化が関連していることが伺われた. 以上について,外国雑誌および国内雑誌に投稿中である.
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