研究課題
平成18年度は、静止直立位の姿勢保持に関する研究と、階段昇り動作を対象として意識と動作との対比に関する研究を主に行った。(1)ヒトの静止立位姿勢は、ロボットと異なり、反射機構を用いて揺れながら維持している。その姿勢維持の戦略として、ヒトは視覚情報や壁に触れるなどの身体以外の環境への触覚情報などを応用している。本研究では、それらに加えて、自らの指で、自らの身体の大腿部に触れることで、姿勢動揺がどのように変化するのかを検討した。健常な成人男子を対象に、フォースプレート上に閉眼で立ち、両手を腰の前で組む場合と、大腿部に指先で触れる場合とを、圧力中心(COP)の軌跡で比較した。その結果、大腿部に触れる場合は有意にCOP変化量が減少した。その機序は未だ不明であるが、なんらかの生体情報調整戦略があると推定できた。(2)階段昇りにおいて、通常の動作と、身体技法を用いた動作とをバイオメカニクス的に比較検討した。前者は上がろうとする意識で階段を昇り、後者はアレクサンダー・テクニークを基にした身体技法を用い、階段を上がる動作であるが、これを「前に進む(歩く)ことの変形」と捉え、膝関節から動くように意識する、というものである。身体技法鍛錬者を対象に、各条件を5試行行わせて、モーションキャプチャとフォースプレートシステムによって動作を比較検討した。その結果、身体技法を用いると、股・膝・足関節のピークトルクの合計が少なくなり、特に膝トルクが小さいということが明らかになった。(3)上記(2)と向様の方法で、階段降り動作をバイオメカニクス的に比較検討した。その結果、下肢3関節のピークトルクの合計は、逆に身体技法を用いた方が大きく、特に腰と膝関節のトルクが大きい傾向を示した。
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