平成19年度は、歩行および走行における動作構築に貢献すると考えられているドリル、特に股関節を活性化させると考えられているドリルが、どのように下肢3関節トルクを発揮しているか、そして意識によって股関節の貢献度は増すのかをバイオメカニクスの観点から客観的に解析することを目的として研究を行った。 実験は、長さ40mの室内走路において、次の6条件の動作を、それぞれ5試行ずつ行った。1:通常歩行、2:全力疾走、3:ジョギング、4:膝を大きく前に投げ出すスキップ、5:踵引きつけ、6:できるだけ速く進む競歩。条件4〜6について、実験対象者は股関節を大きく動かすことを意識して行った。フォースプレイトと3次元モーションキャフチャシステムによってデータを収集し、それを基にリンクセグメントモデルを構築して右脚の下肢3関節の発揮トルクを推定した。フォースプレートは1000Hz、モーションキャプチャは200Hzで取得後、200Hzで統一して分析した。 その結果、次のような結論が得られた。1:ジョギングのトルク発揮パターンは、同じ両脚離地局面があるスプリントよりも、両脚同時遊脚期の有無という運動形体が異なる通常歩行に類似した。2:スプリントに最も近いトルク発揮パターンを示したのは、速く移動しようとする競歩動作であり、大きな股関節の屈伸トルクが認められた。3:スキップや踵引きつけドリルは、スプリントに貢献するようなトルク発揮が見られなかった。すなわち、スプリント動作に大きく貢献するドリルは、できるだけスピードを上げようとする競歩であり、股関節を活性化させようと意識しても、スキップや踵引きつけのようなドリルは股関節トルク増大にそれほど貢献しないということがと結論された。
|