運動中は筋肉の収縮・弛緩作用によって血管位置が動くため、1.超音波ドップラービームの照射位置、あるいは熱希釈法に用いる熱電対センサーが対象血管からずれやすい、2.血管の断面積や形状を正確に測ることは難しいことが指摘されてきた。今回の研究では、血管位置計測用超音波で運動に伴う血管位置の移動と血管断面積を自動検出し、検出された対象血管内部だけに超音波を限定的に照射して、血流量を定量する方法に着目した。この方法によって血管外組織への超音波照射を無くすことが可能となり、市販の超音波ドップラー装置では不可能であった、動きが激しい運動中の筋肉血流量計測という課題をブレークスルーできる。本研究では血管位置自動追尾手法を用いて、動的な運動における超音波血流測定装置を開発した。ソフト設計:血管位置と血管断面積の画像をパターン認識できるソフト、および受信信号を血流速度成分に変換する処理ソフト(高速フーリエ変換)を設計した。装置の組立・評価・実証実験:製作したプローブと低ノイズ超音波送受信回路、処理ソフトを結合し、動作確認を行った。最後に、上腕動脈の表面に超音波プローブを取り付けて掌握運動中の筋血流計測を試み、血管位置の自動検出と追尾、および血流量を定量することが可能かどうかを検証した。結果として、安静状態における血管位置と血管断面積を正確に認識することによって、運動に伴う血管位置の移動と血管断面積の変化を自動的に検出できた。そして、検出された対象血管内部だけに超音波を限定的に照射して、血流量を定量することに成功した。
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