研究概要 |
超短期間の筋力トレーニングが,神経筋機構に及ぼす影響について検討することが本研究の目的である.本年度は昨年度行った4日間の筋力トレーニング前後における,等速性膝伸展動作中の大腿四頭筋の神経筋活動の結果を分析することであった.8名の成人男性が等速性膝伸展による角速度120゜/secにおける等速性膝伸展運動を,休息日をはさむ5日間のうち4日間行った.コントロール群として8名の成人男性が実験に参加して,トレーニング群と同様に前後の測定のみを行った.測定の前後に角速度0゜/sec,60゜/sec,120゜/sec,240゜/secの等速性最大筋力発揮中の大腿直筋,外側広筋および内側広筋から表面筋電図を記録した.表面筋電図は角速度が設定した角速度に達した部分におけるroot mean square(RMS)を計算した.表面筋電図の電極貼付部位を2回の測定で同一とするため,マジックで印をつけておいた.等速性膝伸展力に関しては,昨年度の報告のようにいずれの角速度においても有意な筋力の増加は認められなかった.一方,表面筋電図については測定に用いた全ての角速度の等速性膝伸展運動においても,RMSが増加する(41.5±46.6%から9.8±21.6%)ものの有意な変化ではなかった.しかしながら,個人的に見てみるとRMSが50%から100%程度の増加を示す被検者もおり,用いた被検者全体としてのトレーニング効果は認められなかったものの,個人的には著しい神経筋機能の向上が認められた者も見受けられた.以上の結果は,本研究で用いた超短期間の筋力トレーニングは,有意な筋力増加や表面筋電図の増加を引き起こすには至らなかったが,今後の研究につながる重要な知見が得られたことは評価すべきであると考えている.
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