今年度はインターネットを用いた自己学習プログラムの開発を行った。この際、次の流れで研究開発を進めた。 1.インターネットの既存のうつ病予防サービスの検討: まずウェブ調査、文献調査を行い、うつ病予防に際して、インターネット上でどのような試みが行われているか検討した。もっとも多かったのはウェブサイトでの情報提供であり、治療に関する情報提供に不十分なものが多かった。他にメールカウンセリングや自助グループ活動も行われていたが、自己学習プログラムは、認知療法の理論を用いた双方向的な心理教育プログラムが海外で数例報告されていたのみだった。 2.インターネットを用いた精神障害の動向調査 インターネット上のうつ病予備軍の動向を、研究用ウェブサイトの訪問者に対するアンケート調査を用いて検討した。調査対象中、自覚的にうつの訴えが8割に認められ、精神科受診が望まれる重症群のうちでも、医療機関を受診している者は3割で、7割近くが未受診であった。結果より、多数の未受診のうつ病の存在が示唆され、インターネットにおけるうつ病予防のニーズは高いと思われた。 3.自己学習プログラムの開発 以上の検討を元に自己学習プログラムを開発した。様式は双方向的なHTML fileページ群で、うつ予防の認知療法テキスト、練習問題、症例の物語の3パートの内容からなる。テキストは6つのステップで構成され、テキストをステップに沿って閲覧し、物語を参照し、練習問題を行うことで効率的に学習が行えることを目指している。デザインはflashで作成し、精神科医のアバターが語りかける形式で、利用者に親近感を与えるよう配慮した。練習問題の得点やページの閲覧時間は記録され、後に有効性を検証できるようデータを蓄積するプログラムを組み込んだ。 本プログラムの有用性について、次年度検討する予定である。
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