[目的] 魚類のウロコは、ヒトの膜性骨に類似した硬組織であり、骨芽細胞、破骨細胞さらにI型コラーゲンやヒドロキシアパタイト等の骨基質も備わっている。また、骨芽細胞や破骨細胞は、ウロコ表面に在るのでそのまま培養し、酵素活性も測定できる。したがって、ヒトの骨に代わるin vitro培養系として従来の骨芽細胞株では調べられなかった骨組織の相互作用を、生体内に近い状態で再現できる。そこで、キンギョのウロコを用い、新規骨粗鬆症モデル系を開発する。これらのウロコモデルに対し超音波を暴露し、骨芽および破骨細胞活性や遺伝子発現の変化を調べ骨形成促進あるいは骨吸収抑制に最適な暴露条件を検索し、骨粗鬆症予防機器開発の基礎とする。本年度は、キンギョのウロコを用い、1)骨代謝亢進モデルと骨粗鬆症モデルの作成条件検討を行った。また、2)超音波負荷を行うための超音波負荷システムの開発を行った。 [研究成果] 1)片側のウロコを除去すると、対側残留ウロコの破骨細胞および骨芽細胞活性が共に増加する骨代謝亢進状態となり、ウロコ新生のためのカルシウム供給源となる。われわれはこのことに着眼し、片側のウロコを除去後7日目の残留ウロコが最も骨代謝亢進状態となることを見出した。また、除去ウロコを筋肉内に自家移植すると、7日目には自家移植ウロコには多核の破骨細胞が誘導され、破骨活性が移植前の10倍近くまで増加した。さらに、自家移植10日後にはウロコのカルシウム量が有意に低下することを見出し、骨粗鬆症モデルとなることを確認した。 2)われわれは、市販では得られない直径5cmの98kHz、118kHz、193KHz、502kHz、および1MHzの振動子とそれら用のインピーダンスマッチングボックスを作成した。さらに、超音波のアコースティックパワーを各振動子の平面最大出力ポイントでハイドロフォンにより計測し、振動子の実測アコースティックパワーとアンプ出力モニター値とを対応できるようにした。このことにより、全ての振動子でアンプ出カモニター値から振動子のアコースティックパワーを決定できる超音波負荷システムを作成した。また、超音波暴露による溶液中のフリーラジカル生成量をElectron paramagnetic resonance(EPR)spin trapping法により計測し、1MHzの場合アコースティックパワーが60mW/cm^2I_<SATA>まではバックグランド程度であることを確認した。
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