研究概要 |
本年度は、国立長寿医療センター研究所・疫学研究部が行なう「老化に関する長期縦断疫学調査;NILS-LSA」に参加する中高齢者の歩行データと転倒経験の有無との関連を検討することを到達目標とした。 対象者は、愛知県の大府市ならびに知多郡東浦町在住の地域住民より性・年代別に層化無作為抽出した40-84歳のNILS-LSA第3次調査の参加者男女2,006名である。自記式の調査票を用いて,転倒経験の有無,転倒恐怖感,転倒時期,転倒方向,転倒場所,転倒状況,転倒頻度,転倒による怪我の有無の回答を得た。また対象が通常・速歩行した際の動作を3次元映像解析法(DLT法)を用いて測定した。歩行データの記録は、4-6台のカメラ(サンプリング周波数60Hz、vicon140,Oxford Metrics)と2台のフォースプレート(サンプリング周波数1200Hz、9286,Kistler)により行なった。対象の第5中足骨頭・足関節外果・膝関節中心・大転子・肩峰点の左右5ヶ所計10ヶ所につけたマーカーの変位データおよび床反力データより,速度、歩幅、歩調、関節角度、床反力、下肢関節トルクを算出した。転倒関連データの分析は対象を性・年齢(40-49歳、50-59歳、60-69歳、70歳以上)に層化し比較検討した。また歩行データの分析は転倒経験の有無により群別し、Student-t検定を用いて評価した。 年齢が高い群ほど過去1年間の転倒経験者の割合は増加した。またどの年齢群においても男性より女性で転倒経験者の多い傾向が示された。転倒時の活動では、歩行中の転倒が42.3%と最も多い傾向にあった。転倒経験群と転倒経験の無い群で歩行データを比較した結果、転倒経験群は通常歩行時の平均速度、鉛直方向の床反力ピーク値、足関節底屈ピークトルクが有意に小さい特徴が認められた。今後、転倒経験者の歩行変量間の関連を分析すると共に、対象の背景因子(性、年齢、ADL因子、既往歴・現病歴)を検討に加え、中高齢者における歩行動作の転倒関連因子を明らかにする予定である。
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