| 研究概要 |
本年度は、前年度に引き続き国立長寿医療センター研究所・疫学研究部が行なう「老化に関する長期縦断疫学調査 ; NILS-LSA」に参加する中高齢者の歩行および転倒に関するデータベース用い、転倒経験者における歩行動作の特徴を横断的に検討することを到達目標とした。
対象者は、愛知県の大府市ならびに知多郡東浦町在住の地域住民より性・年代別に層化無作為抽出した40-84歳のNILS-LSA第3次調査の参加者男女2,006名である。自記式の調査票を用いて,転倒経験の有無,転倒状況,転倒方向の回答を得た。また対象が通常・速歩行した際の速度、歩幅、歩調、関節角度、床反力、下肢関節トルクを3次元映像解析法(DLT法)を用いて算出した。全歩行変量に年齢・速度との関連および性差が認められるため、年齢・速度を調整した共分散分析で,男女別に「転倒経験者と転倒非経験者」,「歩行中転倒経験者と転倒非経験者」,「歩行中前・横・後方向転倒経験者と転倒非経験者」各群の歩行変量を比較した。その結果、男女とも,接地直後の前後方向床反力ピーク,支持期足関節角度範囲に有意な群間差が認められ、特に男性では転倒経験の有無の比較において、女性では転倒方向の比較においてその差が顕著であった。それらの結果をふまえ、さらに歩行中の足関節底屈ピークトルク値によって対象を2群(20パーセンタイル未満群/以上群、カットオフポイント 59.8Nm)に分け、年齢、性、身長、体重、歩行速度を調整した多重ロジスティック回帰分析を用いて、転倒経験の有無との関係を検討した。その結果、20パーセンタイル以上群に対する未満群の転倒経験のOdds比は1.31(95%信頼区間1.03-1.66、p<0.05)と有意であった。以上より転倒経験者の歩行動作に関して、1)年齢・性の影響を考慮する必要があること、2)歩行中の足関節運動が変容すること、 が認められた。
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