研究概要 |
多くのウイルスや細菌は細胞表面のタンパク質や脂質に結合した糖鎖と特異的に結合し、細胞内へ侵入する。こうした特定の構造をもつ糖鎖を取り込んだ換気扇フィルターや障子紙を開発し使用すれば、生活空間(空気中)に漂っている病原菌をトラップすることができる。 動物由来の糖鎖を紙(セルロース)へ結合させる条件を検討するため、種々の試薬を異なる濃度で反応させ、下記の条件で紙フィルターを破損することなく動物由来の糖鎖を結合させることができた。5mm^2の紙フィルターを、0.1M NaIO_4を含む50mM酢酸緩衝液(pH4.5)中で室温で1時間処理した。市販のウシ・リボヌクレアーゼBをヒドラジンで処理し、タンパク質から高マンノース型糖鎖を遊離させ、これをヒドラジド誘導体に変換した。過ヨウ素酸酸化したセルロースフィルターとヒドラジド誘導体糖鎖を40℃で8時間反応させ、シッフベースを形成させ、生じる二重結合を1Mジメチルアミノボランを含む100mM酢酸緩衝液(pH4.0)で4℃で18時間反応させ、還元した。反応させた糖鎖(0,0.5,2.5,5μmoles)を定量するため、高マンノース型糖鎖と結合するペルオキシダーゼで標識した植物レクチン(コンカナバリンA)と反応させ可視化後、これをNIHイメージ分析を行った。その結果、紙フィルターに結合した糖鎖の量に比例して、レクチンの結合量が増大することが判明した。 本年度の研究成果として、動物由来の糖鎖を紙へ共有結合で導入する条件を検討し、上記条件で動物-植物ハイブリッド糖鎖を創製することができた。現在1gのヒト血清トランスフェリンから大量の複合型糖鎖を遊離させ、これを紙フィルターへ結合させ、インフルエンザウイルスとの結合試験を専門機関で行う計画である。
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