食品衛生法および農薬取締法が改正され、ポジティブリスト制が導入され、加工食品を含め、その安全性が危惧されている。一方、食品汚染化学物質や農薬は多種に存在し、それらを個々に分析することは困難である事から簡便な多成分一斉分析法の開発が急務の課題となっている。そこで本研究では、Stir Bar Sorptive Extraction (SBSE)-加熱脱離装置および、相対定量データベースを用い、食品汚染化学物質や農薬の食品中残留化学物質の一斉スクリーニングを行った。試料は輸入加工食品類40種を用いた。本法を用いた一斉スクリーニングの結果、2種からDDTs(0.2-4.2ng/g)、1種からpyridaben(0.4ng/g)、1種からpermethrin(1.2ng/g)およびchloropropylate(0.3ng/g)が検出されたが、いずれも残留基準値以下であった。また、容器包装添加剤分析の結果、プラスチック可塑剤であるdiisobutyl phthalate(0.2-240ng/g)、diisobutyl adipate(22ng/g)およびdiethylhexylphthalate(0.6-210ng/g)、缶のコーティング剤由来であると考えられるBPA(2.0-17.9ng/g)がプラスチック容器、缶詰容器試料から検出された。これらの結果は、一回の操作で行うことができ、データベースより化学物質の定性・定量を行うことができることから、SBSE法および相対定量データベースを組み合わせた本法は、従来の農薬一斉分析法と比較して迅速かつ簡便であり、網羅性、経済性も有していることから、食品中残留化学物質のスクリーニング分析に大きく貢献できるものであると提案する。
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