研究概要 |
今年度は,まず,子どもの遊びを教育学的捉えるのではなく,子どもの遊びの意味について,現象学的な観点からそれをモデル化することを試みた.ここでは,遊びという活動が,働くという活動と一定の共通項もっていること,それゆえ,大人たちの余暇活動とは全く意味が異なることを明らかにした上で,子どもの遊びを大人たちが支援していく中での彼らに何らかの気づきを求めていくことが必要であることを理論的に示した. さらに,これらを実際に確かめるために,冒険遊び場づくりの先進地であるドイツで,自然環境を生かした森の幼稚園,教育大学でのモデル学校生態園,都会の子どもを自然に目覚めさせる森林教育施設などを調査した.ここでは,子どもの遊びと環境教育は一体的であり,教育関係組織に留まらず,営林署やボランティア組織とも連携し,閉鎖的な学校教育から開放的で,子どもたちの自由な遊び行動が自然なものとして受け入れられている. 地域環境教育として位置づけられる子どもの遊び行動は,狭義の意味での教育プログラムでは捉えきれない.それゆえ,まず教育的観点から眺める大人の視線を排除し,子どもたちが自由に遊び場づくりをする場面を観察し,それを大人たちが捉えなおすプロセスが必要になる.このための装置は,研究代表者が前に考案した文脈不一致型ゲーミングの枠組みが参考になる.ここでは,子どもの世界と大人の世界の2つのパラレルな世界を想定し,各々の世界間での情報のやりとりは,特に大人たちから子どもへの流れが制限される.大人たちの世界は,学校関係者,行政,地域住民,父兄,そうして冒険遊び場づくりを推進するNPOの方々で構成し,現在,遊び場づくりゲーミングの実施に向けて準備中である.
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